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稲沢矯正歯科クリニックBLOGBlog

【出っ歯は自力で治せる?】危険な自己矯正と正しい治し方を歯科医が解説

2025年10月20日

 

こんにちは。稲沢 下津宮西町の稲沢矯正歯科クリニック、院長の吉廻 守(よしざこ まもる)です。
「この出っ歯、押せば治るんじゃないかな…?」
「矯正は高いし、自分で何とかできたらいいのに」
鏡を見ながら、そんなふうに思ったことはありませんか?

たしかに、出っ歯の矯正治療も「歯を動かす」という点では同じように感じるかもしれません。
ですが、実際には自分で歯を押すのと矯正治療ではまったく仕組みが違います。
むしろ、無理に力を加えることで歯を傷めてしまうリスクもあるのです。
今回は、「出っ歯は自力で治せるのか?」という疑問について、歯科の専門的な視点からお話しします。

目次

「出っ歯を押したら治った」そのとき何が起きている?
 

  SNSや動画サイトなどで「出っ歯を押していたら治った」という話を見たことがある方もいるかもしれません。
ですが、それは一時的に歯の角度が変わったように見えるだけで、根本的に治ったわけではありません。
歯は「歯槽骨(しそうこつ)」という骨に支えられ、その間に「歯根膜(しこんまく)」というクッションのような組織があります。
 

矯正治療では、この歯根膜に時間をかけて少しずつ力を加え、
 

□歯根膜が圧迫された側では骨が吸収される
​□引っ張られた側では新しい骨がつくられる

というサイクルを利用して歯を動かします。
 

この「骨の破壊と再生」をゆっくり繰り返すことで、歯並びが整っていくのです。
一方で、自分の指や棒で押すようなやり方では、この微妙なコントロールができません。
瞬間的に大きな力がかかるため、歯の根っこや神経を傷つけたり、骨にダメージを与えたりする危険があります。
 

 
力ずくで歯を動かすリスク
 

  「ちょっと押しただけなのに」と思っていても、歯は繊細な組織に支えられています。
無理に力を加えると、以下のようなトラブルを引き起こすことがあります。
 

□歯の神経や歯槽骨にダメージを与える
□歯の根が短くなったり溶けたりする
□間違った方向に歯が動き、かえって噛み合わせが悪化する
 

最悪の場合、歯がグラグラしたり、抜け落ちてしまうケースも。
「お金をかけずに治したい」と思って始めた行為が、結果的に歯を失う原因になってしまうこともあるのです。

 
ネットで見かける「自力で治す方法」は信じていい?
 

  最近では、YouTubeやTikTokなどで「自分で出っ歯を治す方法」として、
以下のような方法が紹介されていることがあります。
 

□指やアイスの棒で前歯を押す
□割り箸をくわえて力を入れる
□出っ歯を治すトレーニングをする
 

しかし、これらの方法には科学的な根拠がありません。
「歯列矯正をするお金がない」「家族に理解してもらえない」など、事情がある方も多いですが、安易に自己流の方法に頼るのは危険です。
もし誤った方向に歯を動かしてしまうと、将来的に矯正治療がより難しく、費用も高くなってしまうことがあります。

 
出っ歯を悪化させないためにできること
 

  出っ歯はすぐに治せなくても、悪化を防ぐために日常生活でできることがあります。
 

□頬杖をつかない
□口呼吸をしない(鼻呼吸を意識する)
□前歯で硬いものを噛まない
□舌を前歯で押すクセをやめる
 

これらの習慣は、気づかないうちに出っ歯を進行させる原因になります。
まずは毎日のクセを見直すことから始めてみましょう。

 
軽度の出っ歯なら「部分矯正」で治せることも
 

 
「大がかりな矯正はちょっと…」という方でも、
軽度の出っ歯であれば部分矯正で治せる可能性があります。
部分矯正は、歯列全体ではなく前歯だけを動かす治療法で、
治療期間や費用を抑えられるのが特徴です。
透明のマウスピース矯正(インビザライン・GOなど)であれば、
見た目にもほとんど気づかれずに治療できます。

 
まとめ:出っ歯は自力で治すのではなく、専門家に相談を
 

 
歯は、骨と膜が絶妙なバランスで支え合っている繊細な器官です。
自己流で力を加えるのは、歯の寿命を縮めるリスクがあります。
「矯正は高いから…」と悩む前に、まずは歯科医院に相談してみましょう。
症例によっては部分矯正や分割払いなど、無理なく始められる方法もあります。
そして、すでに自分で歯を押してしまった方も、
歯の根や骨が傷ついていないか一度チェックを受けることをおすすめします。
出っ歯は自力で治すものではなく、専門的な知識と技術で安全に整えるものです。
将来の歯の健康のためにも、正しい方法で治療を進めていきましょう。